なぶら

『なぶら求めて幾千海里、海の男に涙あり』
その昔、下関水産大学を出た友人に教えてもらった歌の一節だ。
「なぶら」は魚の群れという意味。魚(な)群れ(むれ)と一文字ずつ読み、 「なむれ」が「なむら」、さらに「なぶら」になったという。
冷凍技術の発達で、世界中の海が漁場になった。遠洋マグロ船は乗組員を飛行機で運び、船は日本に戻さない。修理や点検の海外で行う。捕れた魚はリーファーと呼ばれる冷凍運搬船に積み替えて運ぶことが多くなった。
水揚げされる冷凍マグロを見ていると、子どもの頃に見た景色が蘇ってくる。
出航の日、江尻の船溜まりに家族や関係者が大勢詰めかけていた。乗り降りに使う足場板が外され、五色の紙テープだけが陸の人と海の人をつないでいる。船のスピーカーからはフルボリュームで演歌が流れる。エンジンが大きく唸り、喧騒と興奮のなかで、水面に白い泡が広がる。そして、船が静かに陸を離れる。人の顔が見えなくなるまで、船に向かって手を振った。
忘れられない光景だ。
【写真上】正月魚と書いて「しょうがつよ」と読む。新巻鮭と同じように鰹を塩漬けにし、寒風に晒したものである。西伊豆の田子だけで作られている。「潮カツオ」は商品名として後からつけられた名前だ。
【写真下】マグロの水揚げ。クレーンで船から下ろし、一匹づつ重さを量ってから冷凍庫に運ばれる。
≪ 手間 | きょうの清水 | 手ががり足ががり ≫